ら・とにか ~新1号館建設レポート~
Vol.4 新1号館の地震・省エネ・環境対策
新1号館は5月末日に引渡しを受け、現在は家具の搬入や電話・LAN設備の導入準備を行っています。
二階屋上の中央には、シンボルツリーが植えられました。
木の選定にあたって、シンボルらしくたたずまいが美しいことだけでなく、植える場所が建物の中にあり地中深く根付かせることができないため、根が横方向に伸びていくものでなければいけない、という重要な条件がありました。
その上で、花が咲いたり実がなるなど季節によって表情豊かなものであること、丈夫で害虫や病気に強いものなどの条件に合う木として、モミジやサルスベリ、シダレザクラなどたくさんの候補があがり、その中から選ばれたのがヤマボウシでした。ヤマボウシはミズキ科の仲間で、小さなひし形の花が咲き、秋には赤い実がなります。これからこのヤマボウシが四季を通じて、道行く人の目を楽しませてくれることになるでしょう。
地震・省エネルギー対策
3月11日に起きた東日本大震災は各方面にさまざまな影響を及ぼしていますが、特にこの震災を機に、今まで以上にエネルギーについての考え方が問われています。
本学では地球環境を守る活動として、以前から「くにおん・エコ」を展開し、空調の温度設定を調整したり電気をこまめに消すなどの省エネ対策を進めてきましたが、これからより一層、限りある資源を有効活用しながら、豊かな生活を送る方法を考えていかなければなりません。そこで今回は、新1号館の地震対策・省エネ・地球環境保護への取り組みをご紹介します。
建物の地震対策
3月11日の地震では本学でも強い揺れが感じられましたが、免震構造を採用している新1号館は揺れも小さく、全く被害がありませんでした。
建物の地震対策というと、柱や壁を頑丈に作ることで揺れに耐える「耐震」を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、演奏系のレッスンでの使用が主になる新1号館では、ほとんどの部屋にグランドピアノなどの大型楽器が設置されるので、揺れそのものが大きな危険となる可能性があります。そこで、積層ゴムなどで地盤と建物を離し、揺れを緩やかにする「免震装置」を地下階のさらに下、基礎と建物を支える柱の部分に設置し、この装置が建物全体の安全を守ってくれています。まさに、縁の下の力持ちといったところです。
省エネ・環境対策
続いて新1号館で採り入れられている省エネルギーの仕組みです。
まず、空調は一般的に最も多くの電力を使うため、電力消費量を抑えるための工夫が欠かせません。電気が多く使われるのは主に昼間で、深夜は需要が低くなるため、その深夜の間に空調のための水を発生・蓄えておき、昼間、その水を冷房や暖房に使います。こうすることで昼間に使う電力のピークを全体的に減らすことができます。また、深夜の電気代は安く設定されているので経済的です。
空調の次に電力を消費するのが照明です。
昼間は、屋上庭園側のガラスの部分から自然光をたっぷり採り入れることができ、照明をつけなくても明るいので、電力消費が抑えられます。
また照明器具には人感センサー、光センサーが付いていてセンサーが光や人を感知し、自動的に明るさを調節します。また建物の最上部にはソーラーパネルが設置されており、太陽光発電で一部の電力を賄うことが出来ます。
建物の屋上を覆った植物も憩いの場としての機能だけではなく、断熱性を高め空調の効率を高める効果があります。
この階段状の外観デザインは新1号館の大きな特徴ですが、階段状にすることで各階に屋上庭園を設置することができ、より高い効果を発揮することになります。
また、階段部分は客席やステージとしても使用でき、屋外コンサートなど、様々な使い方ができるように工夫されています。以前の中庭のように、たくさんの学生が授業の合間に談笑をしたり、芸術祭などの学校行事ではよりたくさんの人で賑わうことになりそうです。
さらにこの屋上庭園や、最初にご紹介したシンボルツリーも、環境に配慮した工夫で維持されるようになっています。
地下階の下には免震装置などと一緒に雨水槽タンクが設置されていて、雨が降るといったんこの雨水槽に貯まり、そこから屋上全体の植物に水をいきわたらせることができるようになっているほか、トイレの洗浄水などもここの水を再利用することができる仕組みです。もちろん、降水量の少ない冬などは井水や水道水の供給に切り替えることもできます。新1号館ではこのように、自然のエネルギーを利用した仕組みが多く使われています。
また、このような工夫もあります。
これは壁面のサンプルです。縦に溝がついています。雨天時は雨水がこの溝を通り、他の部分は汚れにくくなります。一見、環境保護とは関係がないように思いますが、こうした工夫は見た目だけの問題ではなく、建物の劣化のスピードを遅らせることができます。建物そのものが頑丈で壊れにくいことも重要ですが、細かい部分のメンテナンスのしやすさ・汚れがたまらないことなどに配慮することが、ひとつの建物を長く使用することに繋がり、結果として資源を無駄にすることがありません。このような小さな工夫を重ねていくことが今後ますます重要になってくるのではないでしょうか。