ブックタイトル国立音楽大学 大学案内 2017

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国立音楽大学 大学案内 2017

column国立音楽大学 学長 武田 忠善TAKEDA Tadayoshiクラリネット奏者。1975年国立音楽大学器楽学科卒業。フランス国立ルーアン音楽院に留学し巨匠ジャック・ランスロ氏の下で研鑽を積み、同音楽院にて1等賞を得て卒業。1977年パリ・ベラン音楽コンクール第1位。78年第47回日本音楽コンクール第1位、続く第35回ジュネーブ国際音楽コンクールでは、日本人初の入賞を果たし銅メダルを受賞。国立音楽大学演奏・創作学科教授として多くの逸材を育てるとともに、東洋人クラリネット奏者として初めてパリ国立高等音楽院でマスタークラスを担当するほか、シンガポール、韓国、台湾、スペイン、アメリカに招聘されるなど、海外でも演奏家、教育家として活躍。2015年4月学長に就任。P r o f i l e 国立音楽大学が国内外から「アンサンブルのくにたち」と呼ばれているのをご存じでしょうか。演奏で素晴らしいハーモニーを生み出す音楽大学ということと、学生と教職員が一体となって音楽を創っている大学、というくにたちの特徴を的確に言い表していると思います。 教員の多くは現役で活躍するプロであり、学生が一緒に演奏する機会も多くあります。くにたちで学び、社会に出たあと指導者として戻ってきている先生もたくさんいます。「教職員みんなで学生を見守って一緒に音楽を創る」伝統が、いまなお脈々と受け継がれているのです。 音を重ねて一つのハーモニーを創っていく、これが音楽の原点です。美しいハーモニーを生み出すには仲間が必要で、社会における人との交わりも同じ。音楽を学ぶ意義は、人と関わり、ともに何かを生み出す楽しさを知ることにあります。くにたちの学生は、そのチャンスに大いに恵まれているといえるでしょう。 ただ好きなだけでは成長できません。ピアノを練習して音感を鍛えたり、音楽理論や語学、音楽史や作曲家のルーツを学んだりといった基礎を積み重ねていくと、それが音に表れるのです。くにたちでは、1・2年生で基礎を多角的に身につけ、3・4年生で専門的な知識や技能を深めるというカリキュラムが組まれています。基礎とはつまり音楽を軸とした教養であり、将来音楽で、あるいは音楽以外で何をするかを考えた時にも、必ず役に立つものです。音楽を愛し、自らの夢に向かって積極的に取り組む皆さんを待っています。 NHK交響楽団の前身「新交響楽団」が結成されたのは、本学設立と同じ1926年のこと。それ以来、N 響と本学の合唱団との共演は、90年間絶えることなく行われています。 なかでも、1928年の年末に近衛秀麿指揮で日本青年館において行われたベートーヴェン『第九』の共演は、いまや日本でもすっかり恒例となっている「年末の第九」のさきがけとなりました。その後現在に至るまで、N 響との『第九』の共演は200回以上に及んでいます。共演した『第九』の指揮者は、ローゼンストック、カラヤン、スウィトナー、ノイマン、ブロムシュテット、インバルなどそうそうたる名前ばかり。スウィトナーは5回にわたる『第九』共演のほか、本学のオペラ公演・オーケストラ定期演奏会で優れた指導力を発揮し、本学は1987年に名誉教授の称号を贈呈しています。 またサヴァリッシュとは『第九』での共演こそありませんが、1986年にメンデルスゾーンの『エリア』で共演し、大成功を収めました。このときの名演と長年の実績が評価され、1989年に本学合唱団は、N 響の発展に顕著な功績のあった者に贈られる「有馬賞」を受賞しています。 本学が声楽において多数の優れた人材を輩出してきた背景には、このような素晴らしい環境がありました。一流の指揮者やオーケストラとの共演は、学生たちにプロの現場の厳しさを教えるとともに、教室だけでは得られない貴重な経験を与えてきたのです。プロに育てられたくにたちの合唱団9